1. 前置き
2.5インチHDDにおける法則(9.5mm厚のシリーズ限定)として、最大容量モデルは2プラッタ4ヘッドなので、その丁度半分の容量のモデルは1プラッタ2ヘッドとなり、プラッタ当たり容量、ひいては記録密度は変わらないので、先頭部分の速度は遜色ない(個体差は別)というものがあった。これを利用して、自分もSSD以前は静音性からあえて半分の容量のモデルを選択するということをやっていた。
そういう点が公称スペックに明記されていれば問題ないのだが、Travelstar 5K1000の場合、500GBモデルはそもそも公称スペックに記載がない。そこで、性能的にどんなものか推測してみたが、NASでペアを組ませている5K500.Bの片割れの健康状態が慢性的によくないので、どうせならと500GBモデル(バルク)を買ってきた。
左が1TBモデル、右が500GBモデル。
略称 (便宜的に) | 型番 | 容量 (GB) | 製造 年月 | ファーム ウェア | 重量 (g) | 組立 工場 |
---|---|---|---|---|---|---|
5K1000-1000 | HTS541010A9E680 | 1000.2 | 2012/2 | 480 | 100(注) | タイ |
5K1000-500 | HTS541050A9E680 | 500.1 | 2012/2 | 480 | 100 | タイ |
(注)前に計ったときは99gだったが、計り直したら100gだった。
外側からは型番ぐらいしか違わない……そう、重量を計っただけで半分結論は出てしまった。
経験的に2プラッタと1プラッタでは8g前後の重量差があるので、重量が1TBモデルと同じということは、500GBモデルもほぼ確実に2プラッタである。ラベル上の5Vの消費電力が700mAで同じことも、これを裏付ける(5Vにはスピンドルモータが含まれるので)。
以下はCrystalDiskInfo(5 Dev5a)で見たところ。普通。
2. 計測
例によってThinkPad X61sに内蔵し、Windows 7 64bit上で計測した。AHCIのドライバはIntel Rapid Storage Technology 10.1.0.1008。パーティションはない状態。
まずHD Tune Pro(5.00)で記録面を確認。左が1TBモデル(前と同じ)、右が500GBモデル。
これは正直驚いた。2GBの結果が以下。
記録面は4つ。各組の長さは490MB、各面の長さは122MBといったところ。
先頭10GBにパーティションを作り、CrystalDiskMark(3.0.1c)で見たところ。左が1TBモデル、右が500GBモデル。
シーケンシャルアクセスの速度は93MB/s程度になる。
いずれにせよ、2プラッタ3ヘッドの可能性までは予想していたが、4ヘッドとは予想外。プラッタ当たり容量では250GBになるので、1TBモデルの半分。これは5K500.Bの500GBモデルと同じで、性能的にも少し速い程度である。
一応HD Tune Proで全領域を通して見ると、
500GBモデルのグラフの形は1TBモデルと違っている。つまり、末尾の落ち方が少ない。この傾向は他の人によるベンチマーク結果にも出ていたので、もしやと思っていたが、1TBモデルと計測環境は同じだし、空の状態なので、HDD自体の性能がこうだと考えるしかない。
正確には、AccuracyがFullの場合で、先頭と末尾の比率はそれぞれ以下のようになる(SI接頭辞に換算)。
- 1TBモデル: 先頭117MB/s、末尾56MB/s程度で、比率は0.48
- 500GBモデル: 先頭96MB/s、末尾72MB/s程度で、比率は0.75
こうなる原因としては、とりあえず以下が考えられる。
- 線記録密度が末尾に行くにつれて上がっている。
- 末尾部分が記録面の最内周に達していない。つまり、記録面を途中までしか使っていない。
HD Tune Proのランダムアクセスの速度を見ると、
確かに、末尾に行くにつれて500GBモデルの方が少し速くなっている。ではどの辺りで一致するのかというと、500GBモデルの先頭と末尾の比率0.75を1TBモデルに当てはめた場合、この末尾の速度88MB/s程度になるのは650GB付近である。
そこで、きりのいい660GBを1TBモデルの容量と見なし、計測対象の領域をそれぞれの容量の1/4、2/4、3/4、4/4とした場合の速度を比べてみた。
どれも驚くほど近い値になっている。
ということは、基本的に独立したシーケンシャルアクセスとランダムアクセスの結果が符合するということでもあるわけで、これも予想外だが、500GBモデルでは本来の記録面のうち660/1000≒2/3に相当する面積しか使っていないという可能性が十分ありのように思えてくる。
さらに想像を進めれば、2/3を使って500GBなら、3/3を使えば750GBになるわけで、これから500GBモデルは750GBモデルの内周部を使っていないモデルという可能性も考えられなくはない……。
3. まとめ
- 5K1000の500GBモデルは1プラッタではなく、2プラッタ。ヘッド数は高い可能性で4。すべての個体がそうかは分からないが、たぶん「3/4」という扱い、すなわち3記録面問題持ち、ではないかと思う。5K750の500GBモデルがそうなので。
- したがって、性能的にはシリーズ中、最低クラス。5K750の500GBモデルとあまり変わらないのではないかと。もし500GBプラッタと銘打って売っている店があれば変えた方がいいと思う。
- ついでに、500GBモデルは記録面を途中までしか使っていない可能性が考えられる。
4 コメント :
ここを見る前に500GBの1プラッタだと思って買ってしまった…。
今だとOEM Specが出ているし
ラベル面の"Type TS5SAF750"からも
750GBモデルと同デザインの3/4 headsが明白みたいだなあ。
今までの例があるので、ついそう思ってしまいますよね。
一応、OEM Specificaitionにはまだ500GBモデルは載ってなかったと思うので、あくまで推測です。
OEM Specに5K1000-500そのものはないけど1.1の表を見れば500GB製品のラベル面にあるType"TS5SAF750"が5K1000-750のTypeと同一だと判明するので、
物理的な設計としては750と同系列だ、と解釈しているんだけど、違うのかしらん?
まあ、これも憶測でしかないんだけど。
あ、なるほど。
前のシリーズのOEM Specificationも見返すと、あのTypeの下3桁は容量と一致しているので、この500GBモデルのTypeはその規則から外れているわけで、示唆的ですね。
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