1. 1TBモデル
購入したのはリテールボックスの0S03509で、5K1000の1TBモデルになる。昨年の大洪水の後にタイで生産された製品ということで、少し「おっ」と思った。
型番 | 容量 (GB) | 製造 年月 | ファーム ウェア | 重量 (g) | 組立 工場 |
---|---|---|---|---|---|
HTS541010A9E680 | 1000.2 | 2012/2 | 480 | 99 | タイ |
外観は基本的に従来どおり(同じ個体の表裏)。
CrystalDiskInfo(4.3.0)で見たところ。とくに変わったところはない。
これをThinkPad X61sに内蔵し、Windows 7 64bit上で計測。AHCIのドライバはIntel Rapid Storage Technology 10.1.0.1008。パーティションはない状態。
まずHD Tune Pro(5.00)で記録面を確認する。
これは分かりやすい。4つの面の存在が認められる。2GBの結果を見ると、
- 3つの組で丁度2GBになるので、各組の長さは667MB、各面の長さは167MBの計算になる。5K500.Bではそれぞれ380MB、95MBだったので、75%ほど大きくなっている。
- 速度は最高の面で119MB/s(SI接頭辞に換算後)、最低の面で112MB/s程度で、幅は6%ぐらいになる。
シーケンシャルアクセスでは114MB/s程度になる。
したがって、1TBで9.5mm厚の世代としては、サムスンのHN-M101MBB、Western DigitalのWD10JPVTと比べると、他の人によるベンチマーク結果を見た限り、おおよそ同程度と言えると思う。
念のため、HD Tune Proで全領域を通して見たのが以下。
最外周と最内周の差は2倍程度で、HGSTのHDDでは見慣れた弧を描く。
一応ランダムアクセスも。
以上、5K1000の1TBモデルがごく標準的なHGSTのHDDであることが確認できた。
2. 他の容量別モデル
さて、1TB以外のモデルとなると、5K1000は選択が難しいシリーズである。というのも、OEM Specificationを見ると、
- 750GBモデルはヘッド数が「3/4」なので、3記録面問題がある。
- 640GBモデルは記録密度が1TBモデルより落ちる。
- 500GBモデルについて、既に流通しているにもかかわらず記載がなく、性能の手がかりがない。可能性としては1プラッタ2ヘッドか、2プラッタ3ヘッドがあり得る(4ヘッドの可能性は、640GBモデルが3ヘッドである以上、除外していいと思う)。
というわけで、個人的に推測してみたのが以下の表。
容量 (GB) | プラッタ /ヘッド | 記録面 当たり容量 | 線記録密度 (最大) | トラック密度 (最大) | 面記録密度 (最大) | |||||||
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容量 (GB) | 250 との 比 | 密度 (KBPI) | 1825 との 比 [c] | [c]と [b]の 比 | 密度 (KTPI) | 380 との 比 [d] | [d]と [b]の 比 | 密度 (Gbit /sq- inch) | 694 との 比 [a] | [a]の 平方根 [b] | ||
1000 | 2/4 | 250 | 1 | 1825 | 1 | 380 | 1 | 694 | 1 | |||
750 | 2/4 | 188 [1] | 0.75 [2] | 1637 [11] | 0.90 [10] | 1.04 [8] | 318 [11] | 0.84 [10] | 0.97 [8] | 521 [11] | 0.75 [3] | 0.866 [9] |
2/3 | 250 | 1 | 1825 | 1 | 380 | 1 | 694 | 1 | ||||
640 | 2/3 | 213 | 0.85 | 1723 | 0.94 [4] | 1.04 [7] | 335 | 0.88 [4] | 0.97 [7] | 577 | 0.83 [5] | 0.912 [6] |
500 | 2/3 | 167 [1] | 0.67 [2] | 1543 [11] | 0.85 [10] | 1.04 [8] | 300 [11] | 0.79 [10] | 0.97 [8] | 463 [11] | 0.67 [3] | 0.816 [9] |
1/2 | 250 | 1 | 1825 | 1 | 380 | 1 | 694 | 1 |
(注)マーカーの部分が推測によるもの。小数点付きの数字は実際にはもっと高い精度で計算しているので、通して計算すると合わない。
- まず750GBモデルの4ヘッド、500GBモデルの3ヘッドの場合について、容量とヘッド数(=記録面数)から記録面当たり容量を求め[1]、それと1TBモデルの記録面当たり容量である250GBとの比を求める[2]。この比は面記録密度における1TBモデルとの比と基本的に一致すると考えることができる[3](640GBモデルでは0.02のズレがあるが……)。
- 面記録密度における比は1TBモデルのプラッタからどれだけ密度が落ちているかを示すが、この落ちた分を線記録密度とトラック密度に反映するために640GBモデルについて検討する。
640GBモデルでそれぞれ線記録密度とトラック密度における比を求めると[4]、落ち方は同じでない(トラック密度の方が大きく落ちている)ことが分かるので、面記録密度における比[5]からその平方根を求め[6]、これと線記録密度とトラック密度における比との比を求める[7]。
- この比が問題の場合にも当てはまると仮定し[8]、これと面記録密度における比の平方根[9]から線記録密度とトラック密度における比を求める[10]。
- 最後にこれらの比から線記録密度、トラック密度、面記録密度を求める[11]。
- 750GBモデルの4ヘッドの場合: 115×0.90≒103 (MB/s)
- 500GBモデルの3ヘッドの場合: 115×0.85≒97 (MB/s)
3. 最後に
さる3/9に日立はHGSTのWestern Digitalへの売却完了を発表した。これに伴ってWestern Digitalは3.5インチ事業の一部を東芝に売却し、またサムスンのHDD事業もSeagateに売却されたので、今後は2.5インチ、3.5インチとも残る三社が競争する時代になる(さすがにこれ以上は独禁法の関係で減らないだろうが、純粋に競争で脱落する社が出た場合はその限りでない)。
IBMから日立に売却されたときは、看板の掛け替えだけで実質的に存続したのはIBMのHDD事業だったが(ということもあって、個人的には「日立」ではなく「HGST」と呼んでいた)、今回はWestern Digitalも十分なラインがあるので、HGSTのラインは当面は残るにしても、いずれは消えるのだろうと思う(エンタープライズ向けはともかく、コンシューマ向けは)。
個人的には、初めて買ったPCに入っていたのがCaviarで、しばらくそのシリーズを使っていたし、トラブルがあったのは3.5インチの方なので、Western Digitalに抵抗感はない。最近はHGSTが多かったが、元々HDDメーカーに強いこだわりがあるわけでもない。スピンドルモーターがボールベアリングだった時代の末期はどこも等しく騒音がひどかった。あの時代にあのような製品を、競争とはいえ平気で生産していたメーカーは企業としてどうかと思う。
一方、HGSTはIBM時代から細かい情報を割と気前よく公開していて、その面では他社と段違いだったので(Western Digitalはその面では最低)、それがなくなると自分のような計算はできなくなる。もっとも、ゾーンごとのセクタ数が云々とやっていたのは自分ぐらいだろうが……。いや、むしろ公開されてないからこそユーザーが持てる手段で調べる必要が出てくるのかも……。そもそも、HDDの細かい性能差など今時そんな真面目に追求するものでも……。どっちだ。