2010/12/21

Nanoな無線LAN

ThinkPad X6xの右パームレストの熱問題にずっと付き合ってきたが、ようやく最終手段に訴えることにした。つまり、内蔵無線LANカードの撤去である。

1. 代替手段


熱問題に対して内蔵無線LANカードの撤去はすぐに思い付くことだが、その代替手段をどうするかで二の足を踏んでいた。
  • PCカード型の無線LANカードでは、今度は左パームレストに熱問題が発生しかねない。出っ張る部分が邪魔だし(かつては出っ張らない製品も存在したが、規格が古い)、持ち運び時に危なっかしい。かといって、運ぶ度に抜き挿しするのも面倒。
  • USB接続の無線LANアダプターでは、出っ張りが邪魔だし、(以下同文)。
が、最近はUSB接続でも非常に小さい製品が出てきている。その一つがPlanexのGW-USValue-EZで、常用しているLogicoolのNanoレシーバーと同程度なら許せるかと思って買ってみた。

右側がGW-USValue-EZ。

サイズに関しては期待以上で、Nanoレシーバーより短い。X61sに挿した状態で以下。

挿した状態でもNanoレシーバーより出っ張りは短い(厚みは少しあるが)。ということで、サイズは合格点。

2. 設定


Windows 7の場合


X61s上の64bit版、X60s上の32bit版の両方で、Access Connections(5.72)から内蔵無線LANと同じようにプロファイルの設定ができ、ネットワークへの接続/切断、電源のオン/オフも可能。有線LANに繋がった状態からLANケーブルを抜けばAccess Connectionsの機能で自動的に電源オンになって無線LANに繋がり、LANケーブルを挿せば自動的に電源オフになる。無問題。

Windows XP SP3の場合


Access Connections(5.72)内だけでプロファイルの設定はできず、暗号化はOSの機能で設定することになるが、設定ができればAccess Connectionsからネットワークへの接続/切断は可能。ただし、電源のオン/オフはできない。

Planexのユーティリティには電源のオン/オフの機能はないが、内蔵チップはドライバーのファイルを見るとRealtekのRTL8192CUらしいので、Realtekのユーティリティを使うと、電源のオン/オフと同時にネットワークへの接続/切断ができた。
  1. デバイスマネージャで「詳細」を見ると、VID(ベンダーID)とPID(プロダクトID)が分かる。

  2. RealtekのサイトからRTL8192CU用のドライバーとユーティリティのセットをダウンロードし、展開する。このインストーラの設定ファイルであるIsConfig.iniを開き、
    [92CU_Utility]
    TitleName=REALTEK 11n USB Wireless LAN Software
    ProductGUID=9C049499-055C-4a0c-A916-1D12314F45EB
    DeviceID=VID_0BDA&PID_8192;VID_0BDA&PID_8176;VID_0BDA&PID_8177;VID_0BDA&PID_8178;VID_0BDA&PID_817D;

    のDeviceIDの部分に1.で見たVIDとPIDを追加する。
    [92CU_Utility]
    TitleName=REALTEK 11n USB Wireless LAN Software
    ProductGUID=9C049499-055C-4a0c-A916-1D12314F45EB
    DeviceID=VID_2019&PID_ED17;VID_0BDA&PID_8192;VID_0BDA&PID_8176;VID_0BDA&PID_8177;VID_0BDA&PID_8178;VID_0BDA&PID_817D;

    これでインストール。

  3. インストールされた「REALTEK 11n USB Wireless LAN Utility」を起動し、「プロファイル」でネットワークの暗号化などを設定する。

    これで、タスクトレイからこのユーティリティを呼び出し、「無線オフ」のチェックを外せば電源オンになって無線LANに繋がり、チェックを入れれば電源オフになって無線LANから切ることができるようになる。
正直、XPでのやり方はスマートではないが、Windows 7を主用しつつ、時々XPを使うぐらいなら、これで十分。

[追記]

実際に載っているチップはRTL8188CUSとのこと

3. 結果


内蔵無線LANカードを(ついでに一度も使ったことのない内蔵モデムカードも)撤去したが、熱はまだ感じる。これ以上はどうしようもないが。

GW-USValue-EZに機能的な不満はないが、見過ごせない問題もある。それは、

青色LEDが眩しく点滅してうるさい!


外装のプラスチック自体が半透明になっているので、LEDの光が盛大に目に入ってくる。LEDが青色だと格好よく見えたのも昔のことで、その無駄に強い光に辟易するようになって久しいが、これは光の通る面積が広いだけに最悪。周辺機器ベンダーには眩しすぎる青色LEDはもう止めてほしい。

とりあえず黒ビニールテープで軍艦巻きにして対処した。

[追記]

ビニールテープも何なので、外側をエナメル塗料のブラックで塗ってみた。が、遮光力が低い/塗膜が弱くて剥げるという問題で断念。仕方ないので、内側からの対策を考えてみた。

USBコネクタの中を覗くと、PCBとアンテナが見える。構造としては、PCB上のパターンが直接USBの接点になっていて、そのPCBに外側の金属を嵌め、端を半透明のプラスチックで覆ったという形。問題のLEDもPCB上にある。

PCBの上には空間があるので、ここに何か入れてLEDの光を遮ればいいわけだが、白いプラ板で試したら光が透けて駄目だった。ということで、色付きの適当な材料を探したところ、出てきたのがX40の交換したキーボードベゼル。黒いプラスチックで丁度良い。

この薄い部分を約11×4mmの寸法に切り出し、当たりを調整しながら差し込んで固定。

出来映えはこんな感じ。

光は上に出てこなくなった。動作状態を確認したいときは横から見るということで。

2010/09/10

はやぶさ2とEFP

『はやぶさ』の帰還という応援も受けて『はやぶさ2』の計画が進んでいる。この『はやぶさ2』は基本的に『はやぶさ』のマイナーバージョンアップという感じだが、1つ面白い違いがある。それはEFPを抱えていくということ。

1. インパクタ


『はやぶさ2』の当初計画では、探査機と衝突機の2機を飛ばし、衝突機の方を小惑星にぶつけ、クレーターを作って観測&サンプル採取という計画だったが、おそらくコストの問題で探査機1機がインパクタ(衝突装置)を抱えていく方向に修正されている。

このインパクタは硬い物体を小惑星表面に高速でぶつけるもので、『はやぶさ』のサンプラーにも小さなものが仕込まれていた(作動しなかったようだが)。インパクタには十分な威力を持った上で、なるべく小型軽量で、サンプルを汚染する物質を出さず、信頼性の高いものがいいわけだが、ここでチームが目を付けたのがEFP、ということらしい。それを知ったときには、個人的になるほどーと思った。

EFPとは爆発成形侵徹体(Explosively Formed Projectile)のことで、自己鍛造弾(Self Forging Fragments)ともいわれる。原理的には、軍事用のHEAT(対戦車榴弾)=成形炸薬弾と似通ったもので、EFPも軍事用に使われている。


要は、浅く凹んだ金属板の後ろに火薬を詰めて爆発させると、一瞬で金属板が弾丸状に成形された上で超高速でぶっ飛んでいくというもの。HEATのメタルジェットより装甲貫徹力は劣るが、メタルジェットが短い距離で力を失うのに対して、EFPの侵徹体はそのまま飛んでいくという違いがある。基本的に短い円筒形の金属容器に火薬を詰めて信管を付けただけだから、威力の割に簡便な構造で、信頼性も高い。

考えてみれば、小型の探査機が抱えていくインパクタとしては打って付けである。

このインパクタを『はやぶさ2』は下面に抱えていく。
宇宙開発委員会 推進部会(平成22年)(第1回)配付資料の「推進1-1-3 はやぶさ2プロジェクトについて(その1)」のCGから切り出したもの)

インパクタの仕様(暫定)。直径26cm×長さ19cmで、爆発部重量10kgだから、それなりの大きさがある。
宇宙開発委員会 推進部会(平成22年)(第2回)配付資料の「推進2-2 はやぶさ2プロジェクトの事前評価 質問に対する回答」より)

このインパクタの難点は爆発のときに破片が飛散することだが、探査機がインパクタを分離後、小惑星の陰に隠れることでかわす予定。
(同上)

2. 擬人化的に


そんなわけで、次の『はやぶさ2』は、『はやぶさ』のように

「お遣い行ってきました~、もう死にそうだっけど、頑張ったよ~」

という健気な感じではなく、

「いっちょぶちかましたるで~(とインパクタを投擲して逃げる)。ドッカーン……(飛散物多数)。ぶはーっ、でも、ええもん取れたわ~」

という感じにイメージが少し変わるかもしれない。

もちろん、本来の科学探査は別として。

[追記]

インパクタに関して試作品その他の詳しい記事が出ている。

2010/08/13

はやぶさプラモデル(まだ工作中)

エッチングパーツ待ちもあって長期戦になってきたので、タイトルを変更。

1. 太陽電池パドル


パドルの支持架(ブーム)の途中にある桁の位置について、これを確認できる写真があることに気づいた。何のことはない、イトカワに落ちた『はやぶさ』の影のこと。
小惑星探査機「はやぶさ」物語の写真から切り出したもの)

おぼろげな写真だが、桁の位置はパドル寄りであることが分かる。キットの桁もパドル寄りにあるが、実機ではもう少しパドルの方に近い。

さらに「MUSES-C Solar Array Electrical and Mechanical Design」を見ると、パドルの概要図がある。この図のセルの部分に着色すると以下のようになる。

ただし、このセル配置は正確でない。サイドパネルA(格納状態では真ん中にある)については細かい図があるので、これを着色すると以下のようになる。

これは、サイドパネルB(格納状態では一番外側にあるので、実機写真で確認できる)と対称形で一致するので、正確と見なしていいと思う。

問題はセンターパネルで、サイドパネルを参考に想像で補完するしかないが、プラモデル用のエッチングパーツを製作されているAtsDさんがオリジナルキットとして設計中のパドルをfgに上げたものがあるので、参考になると思う。

パドル上に出ているピンについても、同じ資料で正体が分かった。格納時の固定機構の図があるので、これも着色すると以下のようになる。

つまり、本体上にある基台の上に、ブームから伸びた部品、センターパネル、サイドパネルA、サイドパネルBを四段重ねにして固定する構造になっている。これで各パドルを本体にがっちり固定して、打ち上げ時の振動に耐えるということらしい。
  • 格納時には、ロケット鉛筆の中心の芯を抜いたような形の部品を積み重ね、中心の空洞にワイヤーを通し、それで全体を締め付けて固定している。
  • 伸展時には、このワイヤーを基台中にあるワイヤーカッターで切断し、サイドパネルBのピンにあるバネで抜き取る。後は各ヒンジに仕込まれたバネの力で開いていく。
したがって、
  • ピン(固定具)は全てのパネルにある。なお、センターパネルとサイドパネルAの固定具は同じ形だが、開いた後は上下が逆になる。
  • サイドパネルBのピンにはワイヤーをバネで抜き取る機構があるが(詳細不明)、それでピン自体が伸びるということはなさそう。
  • ブームにも桁の横から固定具が出ている。ついでに、ブームの断面は長方形。
  • 本体側面には4本の穴と2本のケーブルがセットになったものが4箇所にあるが、これがこの基台の取り付け部とワイヤーカッター(火工品。冗長性のため2重になっている)の点火ケーブルと思われる。
なお、この固定機構の基台はパドル取り付け前の実機写真には全く写ってない。これは組み立て中はパドルの方に付いていたからだと思われる。盲点だった。JAXAの映像、模型では、唯一1/10模型で再現されている(この模型自体はたいして精緻なものではないので、少し不思議)。

ちなみに、この部分については同じ構造と思われる『はやぶさ2』のCGを見ると、基台がしっかり付いている(オレンジ色の部分)。
宇宙開発委員会 推進部会(平成22年)(第1回)配付資料の「推進1-1-3 はやぶさ2プロジェクトについて(その2)」のCGから切り出したもの)

なお、同じ資料にブームと本体の取り付け部の図もある。これは固定機構と共に実機写真にも不鮮明ながら写っている。
小惑星探査機「はやぶさ」写真集の写真から切り出したもの)

また、ブームの桁の位置を図から計算してみると、以下のようになる。

この図からブームと本体の取り付け部、その横に見える基台、パネルの固定具、ブームの桁とそこから出ている固定具の位置関係も分かる。

以上のように、パネル上の固定具の位置と、ブームの桁の位置、本体上の基台のある位置が、全て関係していることが分かった。そういう目で改めてキットを見ると、パドル上の固定具の位置が全てセル1個分ぐらい横にずれている。こうなるとパドル全体をスクラッチした方が早いような気もするが、どうしたものか。

2. 本体下面


ISASの加藤研究室のギャラリーの写真で、蛍光X線スペクトロメーター(XRS)の位置と形状、広角航法カメラ(ONC-W)の位置が分かったので修正。

ONC-Wの正確な形状は分からないが、取り付け位置の穴の形状から外に出ている部分は円筒形で、長さは側面からの写真にそれと判別できるものが見えないので、かなり短いものと推測した。

XRSは縁から少し離れていることが分かったので、位置をずらしつつ大型化。フラッシュライトの後方の斜め上に突き出した部分も、もっと後ろに伸ばした。LIDARも修正中。

NIRSについては依然情報がない。ファンビームセンサーも回りの機器とのバランス的に小さすぎることに気づいたが、さて。

3. 大利得アンテナの三脚


右後方斜め上からの写真で、自分の勘違いに気づいた。右後方の支柱から張り出した部分は板状だと思っていたが、実際は横幅があるステップのような形状になっている。ついでに、左後方の支柱の張り出しはかなり小さい。

この三脚、傾斜した面ばかりで構成されていて正確な形を掴むのに苦労するが、松浦晋也さんによる実機写真(2002年7月26日のはやぶさ)でやっと全体の形が分かった。これを見ると、前方の支柱には管状の支柱の上に配線用らしき四角の管が重なっている。これをどうするか。

まだ続く。

2010/07/22

はやぶさプラモデル(工作中)

ようやく『はやぶさ』プラモデルの工作が一段落付いてきた。何でそんなに時間をかけているのかというと、ほとんどの部品について手のかかる工作をしているから。

1. 考証の問題


考証といってもあまり難しいことを言うつもりはないが、どこを修正するにしても資料が必要で、その資料が正確でないと折角修正しても後でがっかりなことになる。実際、これに随分振り回された。

問題は何を参考にするかで、結論から言えば、小惑星探査機「はやぶさ」写真集の実機写真がほぼ唯一信用できる。これに加えて、MUSES-C FM総合試験の組み立て中の写真からサーマルブランケットで分かりにくい部品配置が確認できる。

逆に、これら以外は相模原の実物大模型(熱・構造試験モデル)を含めて参考とするに足らない。

この実物大模型、アオシマでも参考にした節があるが、実機写真と子細に見比べていくと正確でないところが多々ある。目立つ部分を挙げると、
  • 再突入カプセルが赤銅色ぽい塗装になっている(実機では他の部分のサーマルブランケットとほとんど変わらない)。
  • 本体角にある化学推進エンジンの基部の形状が違う。軸線も少し浅いように見える(実機ではもっと上下に立っている)。
  • 太陽電池パドルの支持架が前後に長すぎ、本体との取り付け位置もずれている。格納・展開機構らしきものもない。
  • 太陽電池パドル上の電池がない部分の形状が(確認できる範囲でも)少し違う。
  • 高利得アンテナの上にある低利得アンテナが右方向にねじれている(実機では真っ直ぐ)。
  • 再突入カプセル側の中利得アンテナ(MGA-A)の基部にある円筒がない。
  • 本体両側面の機器の配置が微妙に違う。
  • イオンエンジン部分の蛇腹の質感が違う(実機ではもっと柔らかい感じ)。
結局、参考になるのは伸びた状態のサンプラーホーンの構造ぐらいしかない。

2. 工作状況


一通り部品の修正を終えたところ。

本体前面(再突入カプセル側)


再突入カプセルはキットではぷっくり膨らんだ半球形で、完成写真を見て一番違和感があった。実機では先端が丸まった低い円錐形なので、大きく削り込んで修正。位置も少し引っ込める。

角の化学推進エンジンの基部は正確でないので、プラ板を当てて削って修正。中心上の角のようなものは中利得アンテナ(MGA-A)の基台で、強度を考えて上面と一体化。その横のホーンが位置する部分は本体に切り欠けがあるように見えたので、切り込んだ。その他、スタートラッカの基部を大きくし、Xバンドパワーアンプにひさしを付けた。

本体後面・下面


化学推進エンジンの基部を前面同様に修正。フラッシュライト周辺をプラ板で作り込み。右側の箱は蛍光X線スペクトロメーター(XRS)の場所違いのようなので、右側面との縁に移設。この他に広角航法カメラ(ONC-W)、近赤外線分光計(NIRS)があるはずだが、実機写真になく、資料も見つからない。

右側面


放射率可変素子の窓が正確でないので、上の部分は埋めて、下に大型化。ひさしも付ける。二箇所の穴を開口。

左側面


実機にあるパネルが2つないので、大きい方は削り込みで、小さい方は開口してプラ板を段差を付けて嵌めることで表現。中心の縦のモールドに当たるものは実機にないので埋める。二箇所の穴も開口。

ミネルバ


横に切断して高さを詰めた。横のモールドは消えるが、キットではかなりの樽型なので、どっちにしても修正は避けられない。本体下面のミネルバケースに収まる。

中利得アンテナ(MGA-A)


正確な形状が分からず、何度も作り直した。JAXAの模型、CGのいずれにもこれを正確に再現したものがない不思議。問題は基部にある円筒形の部分で、組み立て中の写真では上に向かって斜めにそぎ取られた、角張った金物になっていて(JAXAの模型でもその形状)、完成状態とは違う。

サンプラーホーン


回りのワイヤー状のフレームや先端の短冊状の板など色々試作してみたが、細かすぎて諦めた。スケール的に工作の限界を感じる部分。

ダクト部分は真っ直ぐに整形し直した後、バネを巻き付けて螺旋状の芯を表現(本当は回転方向が逆)。その下のホーンは痩せすぎなのでパテを盛り付け、ダストガードとの境目にワンポイント的に7mmの銅パイプを嵌め込んだ。先端は削ってテーパーのない円筒形に。根本はネジを埋め込んで(本体にはナットを埋め込んだ)、完成後に脱着できるようにした。

高利得アンテナ


キットでは高利得アンテナの反射鏡のフレームをぶった切る形で三脚の支柱の穴が開いているが、実機をよく見ると反射鏡が少し回して取り付けられ、フレームが支柱と干渉しないようになっている。少し間抜けに見えるので、そこだけ修正しようとナイフを握ったら、ざくざく肉抜きを始めていた。

フレームが切れている部分は0.6mmのピアノ線を通し、パテで整形。実機の薄さに近づけるべく削り込んでいくと折れる箇所が相次いだので、いい加減で諦めて最外縁はパテで整えた。問題はこれに貼るメッシュの選択で、実機では目が見えないほど細かいものなので(ボックスアートの網目は大げさ)、実は一枚板でも同じような気がする。

三脚の頂点の下側、反射鏡の焦点にある特徴的な半球がキットのものでは小さすぎるので、Waveの丸パーツ(Iチップの6mm)で代替。実機は半球より少しはみ出した微妙な形なので、削って形を出す。三脚は強度も考えて2mmのアルミ板に0.8mmのピアノ線を曲げて差し込み、それに1.2mmのステンレスパイプを通す形で作り直し。正確な形状は後で低利得アンテナと合わせて出すつもり。

この三脚と反射鏡を組み合わせるとこんな感じ。

ちなみに、三脚の上側に付く低利得アンテナは実物大模型ではテキトーで、むしろキットの方が実機に近い。

[追記]

三脚の基本的な形状ができた。実機のようにサーマルブランケットがかかった状態を表現。

架台部分は骨組みとなる2mmのアルミ板の下に1.2mm、上に0.5mmのプラ板を貼り合わせ、側面をパテで整形している。キットの低利得アンテナを利用し、その基台の円柱の中心、三脚の中心、半球の中心に0.8mmのピアノ線を通して工作時の基準にしたが、低利得アンテナが後ろすぎたので、わずかに前に出している。

三方向から見たところ。アルミ板が露出しないよう少し削ってからパテを付けたが、調整しているうちに後ろは出てしまった。右後方の支柱に付く出っ張りは1.2mmのプラ板に0.6mmのピアノ線を通して固定し、厚みを足すために0.3mmのプラ板を貼り合わせた。

下から見た状態。3本の支柱の間に半球がぴったり収まる。

太陽電池パドルの支持架


太陽電池パドルの支持架はキットでは強度重視の形状で、考証は捨てている感がある。いずれにしても実機写真がないので、正確な形状は確認できない。問題は前後の横桁の間にある縦桁の位置で、資料によって本体寄り、ほぼ中間(実物大模型)、パドル寄りの三通りがあって、判断に困る。概して、古めの資料では本体寄り、新しめのCGではパドル寄りのことが多い。

また、この桁の接合部分に補強の当て板が付いているものがあるが、この正確な形状も分からない。とりあえずボックスアートに倣って控えめなものを付けてみた。ちなみに、ボックスアートは横桁の取り付け位置が実物大模型と同じく間違っている。

パドル自体については、1枚だけから出ている4本のピンの長さの問題がある。キットでは短いが、実物大模型では長めに突き出している。格納状態の実機写真では短いので、キットの方が近い。ただ、展開状態では長くなるのかもしれず、よく分からない。あえて推測すると、他の2枚には対応する位置に穴があるようなので、格納状態では他の2枚を差し貫く形で固定していて、展開するときに抜けて長く出る仕組みなのかもしれない。

3. 感想


まだ道半ばであるが、あえて言いたい。

このプラモデルをもう1機作るかと聞かれると、正直厳しい。実機にそれなりに忠実に作ろうとすると、必要な工作量が馬鹿にならない。

ガレージキットでアップグレードパーツを出すところがあれば、自分は買う。とくにサンプラーホーン、再突入カプセル、イオンエンジン、中利得アンテナ、高利得アンテナを希望。

[追記]

早速、ワンダーフェスティバルで『はやぶさ』用エッチングパーツの試作品が出ていた模様。サンプラーホーン、化学推進エンジンの覆い、太陽電池パドルの配管、本体側面のパネルなど。アンテナなども予定にあるようなので、大いに期待。

2010/06/30

はやぶさプラモデル(工作開始)

13日の『はやぶさ』の帰還は良かった。


途中色々あって、関係者の頑張りと幸運があって帰ってきて、カプセルを落としつつ燃え尽きていく様の美しさは論理ではないと思う。

これを見てアオシマが出した『はやぶさ』のプラモデルを作っておこうと思い立った。さっと組み立てるつもりだったが、実際に見てみるとそうも行きそうにないのが分かってきた。

1. 細部の問題


基本的に組み立てやすいキットだと思うが、細部を資料と見比べていると気になる点が幾つも出てくる。あまり細部にこだわってもきりがないし、スケール的に省略される部分が出てくるのは仕方ないが、それに留まらない部分もある。

そもそもの問題として、『はやぶさ』実機の正確な情報がなかなか見つかりにくい。
  • JAXAのCGは、細部がかなり適当なので参考にしてはいけない。
  • JAXAの相模原にある実物大模型(熱・構造試験モデル)も必ずしも実機(フライトモデル)どおりではない。
  • アオシマの説明書の塗装指示は当てにならない。
というわけで、できるだけ実機の写真と突き合わせる必要があるが、細部が分かる完成状態の写真はあまり出てないし、サーマルブランケットのせいで分かりにくい部分もある。

気になった点を列挙すると、
  • 化学推進エンジンの形が実機とかけ離れている。
  • イオンエンジン部分の蛇腹がない。
  • イオンエンジン同士の間隔が広い(イオンエンジン自体も少し小さいかもしれない)。
  • 中利得アンテナのホーンが閉じている。
  • 中利得アンテナ(再突入カプセル側のMGA-A)の基部が実機と違う。
  • スタートラッカの位置がずれている(実機ではもっと再突入カプセル寄り)。
  • Xバンドパワーアンプ(スタートラッカの横の白い箱)の形が違う。
  • サンプラーホーンのダクトの形が違う。
  • レーザー高度計(LIDAR)の穴がない。
  • 望遠カメラ(ONC-T)の穴がない。
  • ミネルバが縦に長すぎる(実機では縦横が同じぐらい)。
  • ミネルバケースの形状が八角柱になっている(実機では六角柱に近い)。
正直、アオシマにはもっと頑張って欲しかった気もするが、まさかのプラモデル化に贅沢は言わない方がいいか。それに、自分で手を入れるのはプラモデルの楽しみでもある(程度問題だが)。

2. 工作中


既に作られた方の例を参考にしつつ、とりあえず工作したところまで。

[参考]
さてらいこ.jp: 10日で作る「はやぶさ」探査機
チョー初心者のためのプラモ講座: 小惑星探査機「はやぶさ」の制作
Wしんちゃんドットコム: プラモデル 惑星探査機 はやぶさを購入し組立て
エアロスバルなブログ: はやぶさのプラモを作る
スペース・ハーフムーンblog: はやぶさプラモをつくろう!
プラモ日記: 小惑星探査機 はやぶさ

化学推進エンジン


成形の都合というのは分かるが、そのままでは何か分からないので、ノズルに穴を開けつつ切り離し、覆いの部分は削り込み、後で0.6mmのピアノ線で結合する形にした。この細かい切削作業を12回繰り返すのはさすがに面倒。

中利得アンテナ


ホーンを開口し、欠けている面をプラ板で塞ぎ、基部の穴をパテで塞いだところで、再突入カプセル側のもの(MGA-A)は基部が全然違うことが判明。CGにそっくりな形のものがあるので、それに騙されたらしい。ホーン部分を流用して実物大模型を参考にプラ板で作ってみた(右側)。が、サーマルブラケットのせいで正確な形が分からない。かつ、実機ではもう少し違うように見える。意外な困りどころ。

イオンエンジン


蛇腹を挟むために本体から切り離したところで、イオンエンジン同士の間隔が妙に広いことに気づいた。少し間が抜けて見えるので、十字に切り離し、間を詰めた上で再接着。板全体が小さくなった分、回りにプラ板を足した。中央には一段高くなるようプラ板を重ねる。蛇腹は、試作を繰り返した結果、0.3mmのプラ板を17×16mmに切り、縦横互い違いに重ねてみた。

本体下面(サンプラーホーン側)


サンプラホーンはこのキット最大の難関だと思う。回りのワイヤー状のフレームがないと正確でないが、スケール的に難易度が高すぎる。ダクト部分に入っている筋も、その存在を示すためのものかもしれないが、やはり違う。とりあえずダクト部分にはパテを盛って皺を表現。ただ、実物大模型ではランダムな皺だが、実機では掃除機のホースのように螺旋状の芯が入った形らしい。

レーザー高度計(LIDAR)、望遠カメラ(ONC-T)の穴を開口。ちなみに、LIDARは中心にボスがある。ターゲットマーカは1個落とした状態にしてみた。ミネルバケースは形状の修正を兼ねて半分開いた状態にして、ミネルバを入れてみようかと(実機では存在しない状態だが)。

スタートラッカの基部は移設のため切り離す。ついでに形状をプラ板で修正。実物大模型では箱の上に板が乗った形になっているが、実機では斜めにサーマルブランケットに包まれて四角錐形になっている。その横のXバンドパワーアンプは削り取って広いプラ板に置き換え。実物大模型では単なる箱だが、実機では上の板が少し大きいようなので、そのように。

この調子では、塗装して完成するのはいつのことかという感じだが、とにかくサンプラーホーンが問題。

ちなみに、7月30-31日にはJAXA相模原キャンパス特別公開があるので(『はやぶさ』が持ち帰ったカプセルも展示される)、一度実物大模型を見に行くのもいいかもしれない。

[追記]

相模原キャンパスに行ってみたが、実物大模型はやはり模型然としていて細部の参考になるものではなかった。ただ、想像していたより大きいことは実感できた。

2010/05/30

Indilinxのファームウェア

PhotoFastからIndilinxのBarefootコントローラのSSDのファームウェアが出ないと書いていたら、5月14日に1916がまとめてリリースされたので、フォローアップ。

1. アップデート作業


アップデートには他のベンダーと同じくIndilinxのプログラムを使うが、PhotoFastの場合、その前に筐体を開けてジャンパーをショートさせる必要がある。さらにG-Monster 1.8 IDE V3の場合、ジャンパーのピンが付いておらず、ジャンパーの穴の間を繋げなくてはいけないので、これが面倒だと思っていた。が、マニュアルによれば、クリップを曲げて差す程度でいいらしい。

ジャンパーの位置は、マニュアルに「1.8“44 ピンIDE」と出ている写真を見ると、J1でいいらしい。というわけで、クリップの針金を短く切って曲げたものを差してみた。
G-Monster 1.8 IDE V3: Jumper for firmware update

裏から見るとこんな感じ。
G-Monster 1.8 IDE V3: Jumper for firmware update

この状態でThinkPad X60sのウルトラベースX6に入れると(針金を短く切ったのはこのため)、デバイス名が「YATAPDONG BAREFOOT-ROM」と出る。
G-Monster 1.8 IDE V3: Device name when jumper inserted

ここでUpgrade_AP.exeを起動すると、このSSDが自動的に認識される。メモリの型番は「K9LBG08U0M」なので、K9LBGのM-Dieということになる。もっとも、プルダウンリストには32GBモデルはこれしかないので、迷いようがないが。
G-Monster 1.8 IDE V3: Selecting firmware

これを選択して「Upgrade F/W」を押すと、コマンドプロンプトが開いて実行される。
G-Monster 1.8 IDE V3: Flashing firmware

完了後のメッセージを見ると、ジャンパーを繋いだ状態が「factory mode」、離した状態が「normal mode」ということらしい。元のプログラムに戻ると、「Status」の項に「Success」と出ている。
G-Monster 1.8 IDE V3: Update completed

後は針金を抜いて終了。

2. 確認


アップデート前のCrystalDiskInfoとJSMonitorの結果はこんなもの。
G-Monster 1.8 IDE V3: CrystalDiskInfo (before firmware update)G-Monster 1.8 IDE V3: JSMonitor (before firmware update)

「Maximum Erase Count」などは結構上がってたりするが。

アップデート後はこうなる。
G-Monster 1.8 IDE V3: CrystalDiskInfo (after firmware update)G-Monster 1.8 IDE V3: JSMonitor (after firmware update)

ほとんどの値はリセットされる。これまでのデータは何だったのかという気もするが、そもそも意味は明確になってなかったようなので、気にしても仕方ないか。