1. 作成方法
BUILD2011の資料を見ると、作成方法がさらっと書いてある。
(Channel9 BUILD2011 Running Windows from an external USB drive with Windows To Goのスライド資料より)
環境依存のドライブレターがそのまま入っているので分かりにくいが、大体以下の手順で作成できることが分かる。
- imagex.exeで(予め作成しておいた)OS環境のイメージファイル(.wim)をUSBメモリに展開する。
- Bcdboot.exeでOSを起動可能にする。
- imagex.exeか他の方法でイメージファイルを作成するときに必要なオプション、その有無が不明。
- WDPのバージョン(Build 8102)に対応したimagex.exeはWindows ADK(Windows 7までのWindows AIKに相当)に入っているようだが、これをダウンロードするにはMSDNサブスクリプションが必要。
これに従えば、手順は以下のようになる。
- Windows 7のWindows AIKをインストールし、imagex.exe(64bitは\Program Files\Windows AIK\Tools\amd64に、32bitは\Program Files\Windows AIK\Tools\x86にある)を適当な場所にコピーしておく。
- 32GB以上のUSBメモリをDiskPartでブート可能にしておく。詳しい方法は従来と同じ(diskpartを使ってWindows Vista/7のインストールUSBメモリを作る)。ただし、ファイルシステムはNTFSで。
- WDPのインストールDVDのISOファイルをマウントして(Windows 8では標準でこれが可能)、install.wim(\sourcesにある)をimagex.exeと同じ場所にコピーしておく。
- USBメモリを挿し、管理者としてコマンドプロンプトを開いて、imagex.exeのある場所から以下を実行(かなり時間がかかる)。ここまではWindows 7でも可。
imagex.exe /apply install.wim 1 d:\
(USBメモリのドライブレターがD:の場合)
- 続いて以下を実行。ここはWDPでなければ不可(Windows 7ではBcdboot.exeに/fオプションがないので)。
bcdboot.exe d:\windows /s d: /f ALL
(同上)
2. 実際
実際に試した条件は以下のとおり。
- PC: ThinkPad X61s(CPU: Core2Duo 1.8GHz、メモリ: 4GB、USB2.0)
- ISOファイル: 開発ツール付きの64bit版(WindowsDeveloperPreview-64bit-English-Developer.iso)
- USBストレージ:
- Buffalo RUF3-S32GS-BK (32GB、USB3.0、ファームウェアアップデート済み、TurboPCなど付属ツールは使用しない)
- GreenHouse GH-UFD3-32GF (32GB、USB3.0)
- Mtron MSD6000(MSD-SATA6025-032-N-A、32GB、SATAのSSD)
+SilverStone SST-TS02B(USB2.0、2.5インチ用のUSBケース)
先に、それぞれの速度をCrystalDiskMarkで確認しておく。なお、X61sはストレージ速度が遅いPCなので(前世代のX60sと比べても遅い)、他のPCならもっと速いと思われる。
まずRUF3-S32GS-BK。
テストサイズが1000MBのときの4Kランダムライトが極端に遅いのが分かる。
次にGH-UFD3-32GF。
これは1000MBでも4Kランダムライトがそれなりの値を維持している。なお、他の人のベンチマーク結果を見ると、このUSBメモリの値はこれよりかなり高い。
さらに比較用として、手持ちのUSB2.0のUSBメモリの中で最速のPicoBoost 8GB(以前の計測結果)。
1000MBでもそれほど遅くなっていない。これに比べるとRUF3-S32GS-BKの4Kランダムライトの遅さが際立つ。
最後にMSD6000によるUSB SSD。このMSD6000は最初期のSSDで、引退させていたのを探し出してきた。
当然といえば当然だが、ランダムライトはUSBメモリとは段違いに速い。
RUF3-S32GS-BKの場合
まず用意したのがRUF3-S32GS-BKで、これが順調に行っていればそこで終わりだったのだが。
作成は手順どおりにできたが、imagex.exeの実行には209分もかかった。
作成したUSBメモリからブートすると、インストールに長い時間がかかった後、WDPが起動した。起動後は、見た目は内蔵SSDから起動したときと変わらない。ページファイルを無効にした状態でUSBメモリの使用容量は約14GB。
(C:がWindows To GoのUSBメモリ)
ただし……起動と終了を何度か繰り返すうちにはっきりしたが、動作が極めて、極めて遅い。
起動時間(電源ボタンを押してからStart画面が出るまで)を内蔵SSDと比べると、
- 内蔵SSD: 18秒
- RUF3-S32GS-BKによるWindows To Go(初回ではない): 8分25秒
GH-UFD3-32GFの場合
ここは実際の順番とは前後する。
Windows To Goが極めて遅いのはRUF3-S32GS-BKのランダムライトの遅さが原因という可能性があるので、改めてBUILD2011で配布されたUSBメモリを見ると、外観からKingstonのData Traveler Ultimate 3.0シリーズということが分かった。
このシリーズには第1世代(G1)と第2世代(G2)とがあって、G2の方がシーケンシャルリードでは速くなっているが、ランダムライトではG1の方が他のUSBメモリの中でも飛び抜けた速さを誇っている。これはG1が中身的にはUSB SSDに近いということがあると思う。
[参考]
AnandTech: Kingston DataTraveler Ultimate 3.0 & OCZ Enyo, Quick Look at Two USB 3.0 SSDs
DecryptedTech: Kingstons' Data Traveler Ultimate G2 hits 100+MB/s
AnandTech: Kingston DataTraveler Ultimate 3.0 & OCZ Enyo, Quick Look at Two USB 3.0 SSDs
DecryptedTech: Kingstons' Data Traveler Ultimate G2 hits 100+MB/s
Microsoftが配布したのがG1かG2かは分からないが、ランダムライトの速さからいえばG1の方が理想的ではある。が、生産終了品でうまく入手できなかったのと、G2もランダムライトは速い方なので、G2とほぼ同じコントローラを持ち、入手性も高いGH-UFD3-32GFに方向転換した次第。
GH-UFD3-32GFでWindows To Goを作成したところ、imagex.exeの所要時間は50分と、かなり短縮された。
作成したUSBメモリからブートしてのインストールもそれほど待たされることなく、WDPが起動した。動作は内蔵SSDに比べればややぎこちないが、普通に操作できる。起動時間も十分に許容範囲。
- 内蔵SSD: 18秒
- GH-UFD3-32GFによるWindows To Go: 46秒
なお、RUF3-S32GS-BKでは遅すぎてこの問題を確認するには至らなかった。
MSD6000(USB SSD)の場合
RUF3-S32GS-BKでは遅すぎて使い物にならないと判明した後、USB接続のストレージでランダムライトが速く、手持ちで試せるものとして浮かんだのがMSD6000をUSB接続にすること。
このUSB SSDでWindows To Goを作成すると、まずimagex.exeの所要時間が段違い。20分で終了した。
このUSB SSDからブートするとインストールもさくっと進み、WDPが起動。操作した感じも内蔵SSDと変わらない。起動時間もリーズナブル。
- 内蔵SSD: 18秒
- MSD6000によるWindows To Go: 32秒
(C:がWindows To GoのUSB SSD)
エクスペリエンスインデックスはこんなもの(上が内蔵SSD、下がUSB SSD)。
Primary hard diskは、内蔵SSDの7.2に対してUSB SSDは5.2なので、そんなに低くはない。
以上、USB SSDで作成したらさくさく動作するWindows To Goができた。
3. まとめ
Windows To Goの動作には、USBメモリのランダムライトの速度が重要。これはOSがその上で動作することを考えれば当然ではある。接続がUSB2.0かUSB3.0かは直接関係ないし、PCの性能もあまり関係ないが、USBメモリの速度はPC本体にかなり左右されるところがあるので、無関係とも言えない。
これはReadyBoostの条件と似ているが、最近の、とくに32GB超のUSBメモリではReadyBoost対応は重視されてないようなので、盲点ではある。高速なシーケンシャルアクセスを謳う製品でも、ランダムライトが遅ければWindows To Goには不適格。この点は、Windows 8がリリースされるときにはReadyBoostのような基準を作る必要があると思う。
とりあえず容量と速度を考えれば自分のようにSSDを再利用するのが手っ取り早いが、ランダムライトが遅くないUSBメモリを慎重に選ぶか、先々は、教えていただいたSuper TalentのUSB 3.0 Express RC8のような中身的にUSB SSDに近いものを使うのがいいと思う。ただし、IEの問題は残るかもしれない。
4. 注意点
Windows To Goの場合に限らないが、WDPの起動時に自動chkdskがかかった後、Windows 7で作成したパーティション(ファイルシステムはNTFS)がアクセス不能になったことが複数回あった。逆に、Windows 7で自動chkdskがかかった後、WDPのシステムパーティションがアクセス不能になったこともあった。
バックアップしておけばいいことだが、一応注意を要する。
[追記1]
Windows To Goの作成例。
- Internet Watch: 清水理史のイニシャルB: 第460回:Windows Developer Preview登場! USBで携帯するWindows 8「Windows To Go」を試す
- ComputerWorld: Windows Developer Preview、Windows To Go とゴー
- 人生無限ループ: Windows8(仮)『Windows To Go』を試す(その1)
Windows8(仮)『Windows To Go』を試す(その2)
また、ぱすわさんの場合もIEが起動できないということなので、これは普遍的な問題らしい。
さらに、清水さんの記事を読んで、改めてBUILD2011での動画を見ると、デモで使われていたのはSuper TalentのRAIDDrive USB3.0だった模様(市場で入手できる現在最速の、8chでSuper Talentのドライブと言っている)。確かにこれなら速度的には別格だから、道理でという感じ。資料を見直しても「USB Drive」と書いていても「USB Stick」とは書いてないので、これを(並みの)USBメモリと捉えたのが、ある意味ミスリーディングだったようにも思う。
[追記2]
USB SSDでWindows To Goを使っていたところ、サスペンド、ハイバネーションともできないことが判明した。内蔵SSDから起動した場合には可能なので、Windows To Goの場合特有の問題だと思う。
なお、内蔵SSDから起動した場合も「Power」に「Sleep」の選択肢は出ないが、ThinkPad式のショートカットキー(Fn + F12)でハイバネーションに入り、電源キーでレジュームする。ただし、サスペンド(Fn + F4)したときもハイバネーションに入る模様(非常に速いので実害はないが)。
[追記3]
Windows To Goの最終的な姿が明らかになったので、まとめを書いた。