1. インパクタ
『はやぶさ2』の当初計画では、探査機と衝突機の2機を飛ばし、衝突機の方を小惑星にぶつけ、クレーターを作って観測&サンプル採取という計画だったが、おそらくコストの問題で探査機1機がインパクタ(衝突装置)を抱えていく方向に修正されている。
このインパクタは硬い物体を小惑星表面に高速でぶつけるもので、『はやぶさ』のサンプラーにも小さなものが仕込まれていた(作動しなかったようだが)。インパクタには十分な威力を持った上で、なるべく小型軽量で、サンプルを汚染する物質を出さず、信頼性の高いものがいいわけだが、ここでチームが目を付けたのがEFP、ということらしい。それを知ったときには、個人的になるほどーと思った。
EFPとは爆発成形侵徹体(Explosively Formed Projectile)のことで、自己鍛造弾(Self Forging Fragments)ともいわれる。原理的には、軍事用のHEAT(対戦車榴弾)=成形炸薬弾と似通ったもので、EFPも軍事用に使われている。
要は、浅く凹んだ金属板の後ろに火薬を詰めて爆発させると、一瞬で金属板が弾丸状に成形された上で超高速でぶっ飛んでいくというもの。HEATのメタルジェットより装甲貫徹力は劣るが、メタルジェットが短い距離で力を失うのに対して、EFPの侵徹体はそのまま飛んでいくという違いがある。基本的に短い円筒形の金属容器に火薬を詰めて信管を付けただけだから、威力の割に簡便な構造で、信頼性も高い。
考えてみれば、小型の探査機が抱えていくインパクタとしては打って付けである。
このインパクタを『はやぶさ2』は下面に抱えていく。
(宇宙開発委員会 推進部会(平成22年)(第1回)配付資料の「推進1-1-3 はやぶさ2プロジェクトについて(その1)」のCGから切り出したもの)
インパクタの仕様(暫定)。直径26cm×長さ19cmで、爆発部重量10kgだから、それなりの大きさがある。
(宇宙開発委員会 推進部会(平成22年)(第2回)配付資料の「推進2-2 はやぶさ2プロジェクトの事前評価 質問に対する回答」より)
このインパクタの難点は爆発のときに破片が飛散することだが、探査機がインパクタを分離後、小惑星の陰に隠れることでかわす予定。
(同上)
2. 擬人化的に
そんなわけで、次の『はやぶさ2』は、『はやぶさ』のように
「お遣い行ってきました~、もう死にそうだっけど、頑張ったよ~」
という健気な感じではなく、
「いっちょぶちかましたるで~(とインパクタを投擲して逃げる)。ドッカーン……(飛散物多数)。ぶはーっ、でも、ええもん取れたわ~」
という感じにイメージが少し変わるかもしれない。
もちろん、本来の科学探査は別として。
[追記]
インパクタに関して試作品その他の詳しい記事が出ている。