2019/09/04

パトリオットパーク(クビンカ戦車博物館)

ロシアのモスクワ郊外にある「クビンカ戦車博物館」といえば、第二次大戦の戦史に興味があれば一度は訪れたい場所ですが、簡単に行けるところでもありません。先日のMAKSのついでに行ってきたので、特にツアー以外で公共交通機関を使って行くことを検討する人のために、説明しておきます。

1.概要


基本情報については、小泉悠著「徹底抗戦都市モスクワ」を読んでください。一言でいえば、モスクワの軍事関係施設のガイド本です。自分も電子版をスマートフォンに入れて持っていきました。

まず「クビンカ戦車博物館」(Танковыи Музей Кубинка)は、現在ではパトリオットパーク(Парк Патриот)の一施設として(飛び地のような形で)組み込まれています。「クビンカ戦車博物館」という略称が有名ですが、地図等での実際の表記はそうではない点に注意が必要です。

ロシア語が主ですが、以下が公式サイト。
収蔵していた戦車も、特にドイツ戦車の多くは新たに設置された施設に移動されています。これらの正式名はよく分からなかったのですが、
  • 新しい施設:地図アプリ(Yandex Maps)によればПарк Патриот Музейный комплекс No1、またはチケットの表記によればМузейный площадки No1(英語でいえば、Museum complex No.1、またはMuseum site No.1に相当)。なお、テント張りの仮設構造物。
  • 元の「クビンカ戦車博物館」:地図アプリによればПарк Патриот Музейный комплекс No2(英語でいえば、Museum complex No.2に相当)、またはチケットの表記によればЦентральный музей бронетанкового вооружения и техники(英語でいえば、Central museum of armored arms and technology)。
このNo.1の博物館にティーガーを始めとするドイツ戦車は移動され、No.2に残っていたのはIII号戦車、III号突撃砲、パンター、カール、マウスぐらいでした(2019年8月時点)。したがって、両方行かないわけにはいきませんが、No.1の方が問題でした。

パトリオットパークに関する情報の多くは、年一回のARMY(AРМИЯ)を前提にしているようで、この期間外には当てはまりません。パトリオットパーク(No.2の博物館を除く、新しい方)の中には幾つも施設がありますが、ARMYの期間外に普通に一般人が入れるのはNo.1の博物館だけのようで、それはいいとしても、掲示等にある巡回バスは実際には走っておらず(中を徒歩で移動中に一度も見なかった)、路線バスもありません。シャトルバスがあるような記述も見かけますが、「そんなものはない」

したがって、移動手段は実質的にタクシーのみですが、行きは駅でタクシーを捕まえればいいとして、帰りは駅等から遠いためか、タクシーアプリで呼んでも来てくれません。となると、他の客を乗せてきたタクシーを捕まえるしかないわけですが、そういうタクシーもたまにしか来ず、何とか捕まえて駅に戻りましたが、全く洒落にならない状況でした。

ということで、No.1にタクシーで行くことはお勧めしません。リスクを回避するなら、少々高くついても、ツアー業者を利用した方がよいと思います。もしくは、ARMYの期間中であれば事情は変わってくるでしょうし、他の施設も見られるしで、その方がいいのではないかと。

2. 地理的情報


現地の地理に関しては、駅はKubinka-1(Станция Кубинка-1)を利用することになると思います。No.1には他の駅の方が近いように見えますが、道路網的にKubinka-1駅の辺りが結節点のようなので。

Kubinka-1駅を出ると、早速T-62Mとパトリオットパークの説明板があります。

上の絵ではコンパクトそうに見えますが、実際はかなり広く、下の地図(Yandex Mapsによるもの。以下同じ)の中で、西にあるKubinka-1駅から東南方向に出る線路(電車は走ってない)のTechnical Center駅の近くにNo.2が、Park Patriot駅の近くにNo.1が位置しています。

ちなみに、これだけ見るとNo.1とNo.2の間を直線で移動できそうに思いましたが、実際に行ってみると細い構内道路で、一般車両が走るようなものではないです。

駅からNo.1に車で移動するときは以下のルートになります。Aが駅で、Bがここまではタクシーで入れる地点。

BからNo.1までは徒歩で20分ぐらいかかります。すぐ前の駐車場までツアーの車らしきものが入っていたので、ツアーで来る人は歩かなくて済むようです。

No.1は大きな仮設構造物の各棟が連結されていて、その中央に入口があります。

チケットブースは閉じており、チケットは受付で販売。内部は公式サイトの写真のとおり、スペースに余裕をもって配置され、照明も明るいので、鑑賞条件は良好でした。

各棟の北側に屋外展示場への出入口があり、衛星写真でも点々と見えるように航空機(Su-27、Mig-31、Mig-29他)、車両(T-72、T-80他)等が置かれています。柵はないので、じっくり至近距離から観察可能。航空機は痛みがありましたが、モニノ空軍博物館ほどではなし。

一方、駅からNo.2に行くには以下のルートになります。先の本で実践されていたように徒歩で戻ることも現実的な距離です。丁度客待ちのタクシーがいたので、歩きませんでしたが。

入口は北側にあります。

No.1と違って独立した棟が並んでいる形式ですが、内部は詰込み気味で、光線の状態も悪いので、鑑賞条件は良くないです。

下の配置図では下側が入口で、上の地図と正反対になりますが、入口から見て左側の4棟にソ連(СССР)の戦車が、右側の手前側の棟にアメリカ(США:Сполучені Штати Америки)、カナダ(Канады)、英国(Великобритании)、奥側の棟にドイツ(Германии)の戦車があります。さらに奥側の棟に日本戦車があったようですが、No.1に移動されていました。

ソ連の棟にはレアな実験的車両が多数あります。現用のT-90Aもあり。ドイツの棟は前述のとおりNo.1に移動されたものが多く、スカスカ。

所要時間はどこまでじっくり見て回るかによりますが、No.1の方はさくさく回れば屋外展示を含めて2時間半、取りこぼしなくディティールまで写真に収めようとすれば5時間ぐらい。No.2の方は一台一台をきれいに写真に収められる状態でないこともあり、急げば1時間、丁寧に回れば2時間ぐらいでしょうか。No.1との移動がスムーズに行くことを条件に、両方を1日でまあ大体見て回ることが可能です。

以上、参考までに。

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