初めに、使用率という数字はYahoo!などが(たぶん一目で分かるように)東京電力のデータを加工して出しているだけで、東京電力自身が積極的に出しているものではないので、念のため。自分はTPTPコネクトで計算してバッテリ駆動時間の閾値に使っているが。
1. 電力使用率とピークタイム
3/23から6/30までの電力使用率とピークタイムを一覧にしてみた。赤みが強いほど使用率が高い。なお、前回は速報値で計算したが、今回は確定値で計算したので、5/7までの数字でずれている部分がある。
使用率はゴールデンウィーク明けの5/9の週に高くなってからは低い状況が続いてきたが、6/20の週にぐぐっと上がり、週末を挟んでまた上がってきている。
ピークタイムに関しては、東京電力による予想の的中率はあまり高くないが、数字的には僅差だったりすることが多いので、それほど外れているわけでもない。
一方、ピーク使用量も見れば分かるとおり、使用率と使用量は単純な比例関係にはない(使用率の高い日が使用量も高い日とは限らない)。これは母数の「ピーク時供給力」も日ごとに変動しているからで、使用率を理解するにはこの間の関係を見る必要がある。
2. 電力使用量と「ピーク時供給力」
まず3/23から5/11までについて、電力使用量と「ピーク時供給力」、さらに都心部の最高気温(気象庁のデータによる)の推移を見ると、
ピーク使用量が「ピーク時供給力」に近づくほど使用率は高くなるが、3月の切迫した状況を脱した後、4月に入ってからは一部の高い日を除いて余裕がある。
基本的に使用量は平日に高く、週末に低くなるが、東京電力はそうした需要を予想して「ピーク時供給力」を調整しているらしい(発電施設の整備点検のやり繰りがあるだろうし、需要がないのに高くしておく理由もない)ことが見て取れる。
また、使用率が特に高い日を見てみると、
- 4/4に90%を超えたのは、週初めの需要を甘く見ていた(翌日から供給力を上げたこともあり、使用率は下がっている)
- 4/23に90%を超えたのは、週末だから需要が下がると予想したら、意外に下がらなかった
- 4/29と5/6に90%を越えたのは、需要が落ちるゴールデンウィーク直前と狭間だったにもかかわらず、需要がそれほど落ちなかった
続いて5/12から6/30までを見ると、
5/9の週は「ピーク時供給力」が低めだったので使用率が高くなっているが、それ以降は東京電力が供給力を上げたにもかかわらず需要は横這いだったので、使用率は低い状況が続いていた。
その間にも6/6の週、6/13の週と、東京電力は供給力をじわじわ上げて用意してきていて(過去の実績によるものか)、6/20の週に一気に引き上げた。その週の半ばに気温の上昇とともに使用量が大きく伸び、久しぶりに90%を超えたわけだが、それを予想して東京電力は待ち構えていたことが分かる。
その後、東京電力は週末を挟んでさらに供給力を引き上げて対応している。
3. 今後
7月1日の東京電力のプレスリリース(今夏の需給見通しと対策について(第4報))によれば、この夏は大体5500万kWが供給力の上限となるらしい。既に「ピーク時供給力」は5000万kWを超え、これまでは余裕のあった東京電力も、いよいよ本気を出さないといけなくなりつつある。これまでは使用率といっても、それ自体に深い意味はなかったが、今後は本当に供給力との戦いの意味を持つようになってくるのだろう。
一方、6/29は都心部の最高気温が35度に達する中で、使用量は(7月からの電力使用制限が始まる前にして)4570万kWに留まっている。この気温と使用量の関係について、早野東大教授は「(参考出品)TEPCO最大電力と東京の最高気温の関係」で、これまでの実績では最高気温1度上昇につき使用量が約135±17万kWの上昇になっていることを示している。
今後もこの相関関係が続くなら、最高気温が40度に達しても使用量は5300万kWぐらいに留まる計算になるので、このまま波乱がなければ凌げそうにも思う。ただ、さすがに気温が30度台後半になると、我慢とか工夫とかで何とかなる世界ではなくなるのでクーラーを使う人が増えるかもしれず、使用量が急上昇するかもしれない。
いずれにしても、今年の夏は「忘れらない夏」になりそうではある。
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