勿論、ノートPCの消費電力など、暖房器具や調理器具に比べればかわいいものですが、たとえ1台1台の節電によるメリットはたいしたことなくても、台数が増えれば意味がなくもないと思いますし、逆にデメリットの方は多少バッテリ寿命が縮まる以外にはないので、十分やる価値はあると思います。
また、最近はノートPCをあまり持ち歩かなくなって、バッテリ寿命が温存されているThinkPadが多いのではないかと思います。この非常時に際して、その力を発揮させてみてはどうでしょうか。
1. 省電力マネージャーによる「ピークシフト機能」
ThinkPadの電源管理ソフトである省電力マネージャーには「ピークシフト機能」が付いています。これを使うと、ACアダプターを差したままでも、予め設定した時間が来ると自動的にバッテリ駆動に切り替え、その時間が過ぎるとまた自動的にAC駆動に戻す(バッテリは充電される)ことが可能になります。これにより、その時間の間の消費電力を減らし、ピークを緩和することができます。
2. 前提
省電力マネージャーにピークシフト機能が付いたのは、今年2月にリリースされた以下のバージョンから。何というタイミング!
- Windows Vista / 7用: Ver.3.40(最新はVer.3.45)
- Windows XP用: Ver.1.90(最新はVer.1.95)
- Xシリーズ: X32, X40, X41, X41 Tablet, X60, X60s, X60 Tablet, X61, X61s, X61 Tablet
- Tシリーズ: T43, T43p, T60, T60p, T61, T61p
- Rシリーズ: R51e, R52, R60, R60e, R61, R61e
- Zシリーズ: Z60m, Z60t, Z61e, Z61m, Z61p, Z61t
- Gシリーズ: G50
自分の手許では以下の環境で動作を確認しました。ただし、なぜか新しいVer.3.45とVer.1.95では「ピークシフト機能」が表示されなかったので、古いVer.3.40とVer.1.90を使用しています。
- Ver.3.40(Windows Vista / 7用):
- X61s上のWindows 7 64bit 無印/SP1
- X60s上のWindows 7 32bit SP1
- Ver.1.90(Windows XP用):
- X60s上のXP 32bit SP3
- Ver.3.40(Windows Vista / 7用):
- Ver.1.90(Windows XP用):
対応機種については、その後の展開があったので、こちらをご覧ください。
3. 設定方法
以下はThinkPad X61s上のWindows 7でVer.3.40の場合ですが、XP上でも基本的に同じです。
- 省電力マネージャーを開いて「ビューの切替」で「アドバンス」モードにする。上のタブから「電源スケジュール」を選び、「新規」のボタンを押す。
- 「スケジュールを編集」のウインドウが開くので、各項目を設定する。
- 名前は適当で可。
- 「処置」はプルダウンリストから「ピークシフト機能」を選ぶ。
- 実行間隔はとりあえず「毎日」にチェック。週末などは逼迫しないようなら、「毎週」にして右の「日時」から実行する曜日を指定するのもアリかもしれない。
- 有効期間の開始の日は、自動的に今日の日付が入る。なお、数字の右にある上下のカーソルがうまく働かないときには、数字をハイライトにして直接打ち込めばいい(以下同じ)。
- 有効期間の終了の日は、とりあえず4月一杯にするなど。今後の状況を見て判断。
- バッテリ駆動の開始時間は、18~19時がピークと言われているので、それをコアタイムにしてバッテリの持続時間を考えて判断すればいいと思う。このX61sは大容量バッテリを付けていて4時間強は持つので、17~21時の4時間としている。
- バッテリ消費(=バッテリ駆動)の終了時間。
- 充電禁止の終了時間は、バッテリ駆動の終了時間
に合わせればいい。と同じか、それ以降にすればいい。この時間から通常のAC駆動の電力+バッテリ充電用の電力を消費するようになるので、この終了時間はより後ろにずらしてもいいかもしれない。なるべく後ろにずらし、電力需要の落ちる時間帯にした方がいい。とりあえず22時に変えた。 - バッテリ駆動の開始時間になる前にメッセージ(下記)を出すようにできる。とりあえず10分前にした。
設定後、下の「OK」を押して保存。
- 「電源スケジュール」に戻ったところ。設定した時間などを確認して、下の「適用」を押す。
- これで、指定した開始時間の10分前になるとメッセージが出て、カウントダウンが始まる(上記の設定で出ないようにすることも可)。
- 開始時間になるとメッセージが変わる。
バッテリ駆動中はタスクバーにあるアイコンが変わる。これは開始前。
開始すると、コンセントのアイコンが緑になる。
- 終了時間になるとAC駆動に戻る。
バッテリ充電が始まると電力消費が跳ね上がることが分かったので、充電禁止の終了時間はなるべく後ろにずらした方がいいと変えました。
4. その他
- このピークシフト機能による消費電力の低減は、所詮、暖房器具などとは比較にならないので(ThinkPadのACアダプターはほとんどが100W以下)、そちらの対策を取った上での話です。
[参考]
誠 Biz.ID: 3分LifeHacking: 節電の参考に――電気製品の消費電力まとめ
- 別にこの機能を使わなくても、手動で電源コードを抜けば同じことですが、自動化して手のかからないようにした方が、負担感も少なくなって、より多くの人にしてもらいやすくなると思います。
- そもそもピーク時にPCを使わなければいいという意見もあると思いますが、なるべく両立できるようにした方が、負担感も少なくなって(以下同文)。
- ピーク時に限らない節電の観点からは、省電力マネージャーの設定でCPUの最高速度を落とすなどすると効果的です。このX61sでは「最低速」にしていますが、日常的な使用で遅いと感じることはまずありません。ついでに、自分はNASのない生活に戻りました。
[参考]
Lenovo環境トピックス
PC Watch: 元麻布春男の週刊PCホットライン: パソコン電源もオフピーク。IBMの新しい電源制御プロジェクト
PC Watch: 元麻布春男の週刊PCホットライン: 深夜電力で充電できるように進化したピークシフト
Lenovo環境トピックス
PC Watch: 元麻布春男の週刊PCホットライン: パソコン電源もオフピーク。IBMの新しい電源制御プロジェクト
PC Watch: 元麻布春男の週刊PCホットライン: 深夜電力で充電できるように進化したピークシフト
同様のピークシフト機能は東芝のノートPCにもあるようなので、Dynabookユーザーの方々は試されてはどうでしょうか。
[追記]
ピークシフト機能による効果を試算してみました。ただし、荒い仮定による計算なので、その点はご留意ください。
- まず日本の国内PC市場へのLenovoの出荷台数は、IDCの発表(2010年国内クライアントPC市場実績値を発表)によれば2010年は99.1万台、2009年は61.0万台です。
2008年以前のデータはありませんが、この2年間に出荷されたものならほとんどが現役だと思いますので、この合計160.1万台を計算のベースにします。なお、この中にはデスクトップ機や、Lenovo Gシリーズ、IdeaPadも入っているはずですが、内訳が分からないので措いておきます。
- このうちの何台が東京電力と東北電力の管轄地域で稼働しているかですが、2010年の国勢調査の速報値から計算すると、東京電力の地域(静岡県は富士市以東とした)の人口が43,797,046人、東北電力の地域の人口が11,710,010人で、この合計55,507,056人は全人口の43.3%に当たります。
乱暴ですが、ThinkPadの地域ごとの稼働台数もこの人口比に従っているとすれば、1,601,000×0.433=693,233(台)が東京電力と東北電力の地域に存在することになります。
- ThinkPadの主力は数の上では基本的に据え置きのTシリーズやRシリーズだと思いますが、このACアダプターの容量90Wを基準とすれば、消費電力の合計は693,233×90=62,390,970(W)≒6.2(万kW)となります。
- 2005~2008年の4年間に出荷されたThinkPadも計算に入れれば、その相当数は既に現役でないとしても、かなり増える可能性がある。
- 出荷台数にThinkPad以外がどれだけ入っているか分からない。
- ThinkPadは企業ユーザーが多いと言われるが、夕方のピーク時は元から就業時間外で稼働してないものが多いかもしれない。一方、これぐらいの時間なら平気で仕事をしていることも……。
- ACアダプターの容量一杯を常に消費しているわけではなく、通常時はもっと低い。
いずれにせよ、6.2万kWというのは、電力の不足分として取り上げられる数字に比べれば小さなものですが、ピークシフト機能を使うことで大きなデメリットがあるわけでもないので、自分としてはやる価値はあると考えています。
(このエントリには補足があります)
0 コメント :
コメントを投稿