2012/05/26

直角なLANケーブル

ThinkPadのXシリーズなどではLANコネクタが側面にあり、LANケーブルの取り回しが問題になり得るが、その解決法としてコネクタが直角に曲がったLANケーブルはどうか。

1. 側面にあるLANコネクタ


ノートPCの各種コネクタの配置は、内部の部品配置をやり繰りする都合とケーブルマネジメント的な配慮の両方から決定されるものだと思うが、側面に配置すると抜き差しはしやすくなる一方、横方向に出るケーブルが邪魔になりがちである。

とくに問題になるのは横にマウスを置きたい場合で、中でも太いLANケーブルはかなり邪魔になる。例えばX220では右側面手前側にLANコネクタがあり、右側でマウスを使うには禁止的に邪魔になる。無線化してしまえば解決しないでもないが、速度的には有線LANの方が依然有利である。

この問題の解決のため、コネクタが直角に曲がったLANケーブルを個人的に待望してきたが、探せばあるということで(X220のイーサネットの位置は不便ではないでしょうか?)、その一つを買ってみた。

2. Black BoxのLANケーブル


Black BoxのLANケーブルにはコネクタが各方向に曲がったものがあるが、買ったのは「90°右<=>180°ストレートコネクタ」の3mのもの(EVNSL276-0010-90RS)。直販で、海外からの取り寄せになるので時間がかかると言われたが、実際にはすぐ来たので日本に在庫があったのだと思う。

X61の左側面にあるコネクタに差したところ。
Black Box cable

横の張り出し幅は約27mm。
Black Box cable

他のケーブルと比べたところ。上からBlack Boxのケーブル、Elecomの普通のケーブル、Elecomの巻き取り式ケーブル(Lenovoのイベントでのノベルティ。おそらくLD-MCTUと同じもの)。
Black Box cable

確かに普通のケーブルより張り出しは小さいが、決定的な差とも言い難い。さらに、ケーブルの品質的には比べるべくもないが、巻き取り式ケーブルの方がずっとコンパクトではある。

もう一つ、直角なケーブルの注意点として、曲がった方向にある他のコネクタを塞いでしまうことがある。このX61の場合、VGAコネクタが使用不可になる。

ということを考え合わせると、微妙かな、と言わざるを得ない。張り出し幅のより小さいMisumiのケーブルであればまだ意味があると思うが、あいにくMisumiは法人相手にしか販売していない。入手性も考えると、それなりのカテゴリーに「準拠」を謳った細くて柔らかいケーブルを使えば十分ではないかという気がする。

(注)LANケーブルの業界では、規格を完全に満たしたものを「対応」、規格を満たしてないが性能は同等のものを「準拠」と呼ぶらしい(「対応」と「準拠」の違いはなんでしょうか?)。「準拠」の意味的には間違っていると思うが。

3. 左右の別


Black Boxに限らないが、直角なケーブルでは左右のどちらに曲がったものかが死活的に重要だが、表記上はそれが必ずしも判然としていない。Black Boxの場合は、ケーブルをコネクタのある方が上になるよう垂直に立て、コネクタの爪が見る方向の反対側になるようにしたときに、コネクタが向いている向きで左右を判別する。
Black Box cable
(ラベルの「90 Right to 180 Straight Boots」の表記に注意)

4. XシリーズにおけるLANコネクタ


ThinkPad XシリーズにおけるLANコネクタの位置は、X40以降では以下のような変遷を辿っている。
機種位置参考
X4x右側面奥側ThinkPad X40メモ
X6x左側面中央やや手前側ThinkPad X60メモ
X20x左側面中央やや手前側
(X6xと同じ)
ThinkPad X200(体験会)
X220右側面手前側ThinkPad X220
(PONTAさんのThinkPadLoveのページ。
内部がよく分かる詳細写真が豊富)
X230右側面手前側
(X220と同じ)
ThinkPad X230
(Lenovo公式)

抜き差しのしやすさと邪魔にならないことのバランス的にはX4xのように側面奥側にあるのがベストだと思うが、内部配置の都合で手前側に追いやられている感がある。

X6xはX4xより窮屈な設計で、大きくなったCPUファンが左側面奥側に横滑りした代わりに電源コネクタが右側面に移動し、それに押し出される形でモデムコネクタと併置されていたLANコネクタが左側面中央に移動している。

X20xではLANコネクタは移動しなかったが、モデムコネクタが右側面手前側に移動し、X220で追加されたDisplay Portに押し出されるようにLANコネクタが廃止されたモデムコネクタの位置にコンバートされ、X230ではそれが踏襲されている。

このX220のLANコネクタの配置は設計陣が良かれと思ってしたものとは考えにくいので、有線LANがさほど重視されてないことが窺えるが、さりとて無線は無線で問題はあるので(無線機器の増加に伴う速度低下とか)、有線LANの必要性はまだまだ低下してないと思うのだが。

2012/05/13

HGSTの残照(補足)

2.5インチの1プラッタ愛好者(というのがどれだけ残っているのか分からないが)には残念なお知らせ、と意外な発見。

1. 前置き


2.5インチHDDにおける法則(9.5mm厚のシリーズ限定)として、最大容量モデルは2プラッタ4ヘッドなので、その丁度半分の容量のモデルは1プラッタ2ヘッドとなり、プラッタ当たり容量、ひいては記録密度は変わらないので、先頭部分の速度は遜色ない(個体差は別)というものがあった。これを利用して、自分もSSD以前は静音性からあえて半分の容量のモデルを選択するということをやっていた。

そういう点が公称スペックに明記されていれば問題ないのだが、Travelstar 5K1000の場合、500GBモデルはそもそも公称スペックに記載がない。そこで、性能的にどんなものか推測してみたが、NASでペアを組ませている5K500.Bの片割れの健康状態が慢性的によくないので、どうせならと500GBモデル(バルク)を買ってきた。

左が1TBモデル、右が500GBモデル。
Travelstar 5K1000

略称
(便宜的に)
型番容量
(GB)
製造
年月
ファーム
ウェア
重量
(g)
組立
工場
5K1000-1000HTS541010A9E6801000.22012/2480100(注)タイ
5K1000-500HTS541050A9E680500.12012/2480100タイ
(注)前に計ったときは99gだったが、計り直したら100gだった。

外側からは型番ぐらいしか違わない……そう、重量を計っただけで半分結論は出てしまった。

経験的に2プラッタと1プラッタでは8g前後の重量差があるので、重量が1TBモデルと同じということは、500GBモデルもほぼ確実に2プラッタである。ラベル上の5Vの消費電力が700mAで同じことも、これを裏付ける(5Vにはスピンドルモータが含まれるので)。

以下はCrystalDiskInfo(5 Dev5a)で見たところ。普通。
Travelstar 5K1000: CrystalDiskInfo

2. 計測


例によってThinkPad X61sに内蔵し、Windows 7 64bit上で計測した。AHCIのドライバはIntel Rapid Storage Technology 10.1.0.1008。パーティションはない状態。

まずHD Tune Pro(5.00)で記録面を確認。左が1TBモデル(と同じ)、右が500GBモデル。
Travelstar 5K1000: HD Tune Pro (Short stroke)

これは正直驚いた。2GBの結果が以下。
Travelstar 5K1000: HD Tune Pro (Short stroke)

記録面は4つ。各組の長さは490MB、各面の長さは122MBといったところ。

先頭10GBにパーティションを作り、CrystalDiskMark(3.0.1c)で見たところ。左が1TBモデル、右が500GBモデル。
Travelstar 5K1000: CrystalDiskMark

シーケンシャルアクセスの速度は93MB/s程度になる。

いずれにせよ、2プラッタ3ヘッドの可能性までは予想していたが、4ヘッドとは予想外。プラッタ当たり容量では250GBになるので、1TBモデルの半分。これは5K500.Bの500GBモデルと同じで、性能的にも少し速い程度である。

一応HD Tune Proで全領域を通して見ると、
Travelstar 5K1000: HD Tune Pro (Full and Partial test)

500GBモデルのグラフの形は1TBモデルと違っている。つまり、末尾の落ち方が少ない。この傾向は他の人によるベンチマーク結果にも出ていたので、もしやと思っていたが、1TBモデルと計測環境は同じだし、空の状態なので、HDD自体の性能がこうだと考えるしかない。

正確には、AccuracyがFullの場合で、先頭と末尾の比率はそれぞれ以下のようになる(SI接頭辞に換算)。
  • 1TBモデル: 先頭117MB/s、末尾56MB/s程度で、比率は0.48
  • 500GBモデル: 先頭96MB/s、末尾72MB/s程度で、比率は0.75
この何が問題かというと、線記録密度がゾーン間で一定と仮定するとシーケンシャルアクセスの速度はトラック長に比例し、トラック長はトラック半径に比例するが、記録面の最外周トラックと最内周トラックの半径の比率は以前計ったときの結果から0.47程度なので、1TBモデルの結果はほぼ合致するのに対し、500GBモデルの結果は明らかに合わないことにある。

こうなる原因としては、とりあえず以下が考えられる。
  1. 線記録密度が末尾に行くにつれて上がっている。
  2. 末尾部分が記録面の最内周に達していない。つまり、記録面を途中までしか使っていない。
1.は直接調べようがないので措くとして、2.の可能性は基本的にないと思っていたが、追求するとすればランダムアクセスの速度が参考になる。ランダムアクセスは原理的にヘッドの移動範囲が狭いほど速くなるので、記録面を途中までしか使っていないとすればランダムアクセスは速くなるはずである。

HD Tune Proのランダムアクセスの速度を見ると、
Travelstar 5K1000: HD Tune Pro (Random test)

確かに、末尾に行くにつれて500GBモデルの方が少し速くなっている。ではどの辺りで一致するのかというと、500GBモデルの先頭と末尾の比率0.75を1TBモデルに当てはめた場合、この末尾の速度88MB/s程度になるのは650GB付近である。

そこで、きりのいい660GBを1TBモデルの容量と見なし、計測対象の領域をそれぞれの容量の1/4、2/4、3/4、4/4とした場合の速度を比べてみた。
Travelstar 5K1000: HD Tune Pro (Random test)

どれも驚くほど近い値になっている。

ということは、基本的に独立したシーケンシャルアクセスとランダムアクセスの結果が符合するということでもあるわけで、これも予想外だが、500GBモデルでは本来の記録面のうち660/1000≒2/3に相当する面積しか使っていないという可能性が十分ありのように思えてくる。

さらに想像を進めれば、2/3を使って500GBなら、3/3を使えば750GBになるわけで、これから500GBモデルは750GBモデルの内周部を使っていないモデルという可能性も考えられなくはない……。

3. まとめ

  • 5K1000の500GBモデルは1プラッタではなく、2プラッタ。ヘッド数は高い可能性で4。すべての個体がそうかは分からないが、たぶん「3/4」という扱い、すなわち3記録面問題持ち、ではないかと思う。5K750の500GBモデルがそうなので。

  • したがって、性能的にはシリーズ中、最低クラス。5K750の500GBモデルとあまり変わらないのではないかと。もし500GBプラッタと銘打って売っている店があれば変えた方がいいと思う。

  • ついでに、500GBモデルは記録面を途中までしか使っていない可能性が考えられる。
ここに来て意外な発見だった。